FC2BBS 71229


曽野綾子著「病気も人生 不調なときのわたしの対処法」について

1:岡田 次昭 :

2024/05/05 (Sun) 07:38:50

令和6年4月28日(日)、私は高津図書館から曽野綾子著「病気も人生 不調なときのわたしの対処法」を借りてきました。
この書物は、2020年2月15日、株式会社興陽館から第一刷が発行されました。
238頁の中に沢山の随筆が収められています。
今回は、そのうち、「健康は金では買えない」について纏めました。

曽野綾子さんは、1931年9月17日ですから、現在92歳です。
彼女は、このお歳で殆ど病気をしていません。
病気をしない立派な人生を歩んでいます。素晴らしいことです。

後期高齢者になりますと、何らかの病気を持っています。
人間には車のように部品の取り換えはできませんが、治癒力がありますので、軽い病気であれば治ります。
不幸にして、ガンに罹りましても、初期であれば治ります。
日本の医学はかなり進んでいるということです。

余談ながら、2022年の日本人の平均寿命は、男性81.05歳(世界第4位)、女性87.09歳(世界第1位)です。
戦前の平均寿命を40歳としますと、78年後の現在、平均寿命は倍以上になっています。
長生きはいいことですが、これが今後も続きますと、大きな問題が発生します。
まず、労働人口が減少して、経済の活性化が図れなくなります。
ある調査によりますと、日本の人口は、2100年に6,300万人になると報告しています。
現在の半分近くになります。
次に、企業年金や厚生年金の原資が徐々に減少していきます。
払い込む人が少なく、受給者が増加するからです。
それに長生きしますと、残された人生を如何に過ごすかが問題となります。
趣味のない人は、時間の経過が長く感じられるはずです。
趣味というものは、若い時から育むものです。
今からでは遅いといえます。



「健康は金では買えない」(全文)

健康が人生をかなり大きく左右することは紛れもない事実である。
もし私たちが人並に健康だったら、私たちはまず両親や社会や運命に大きく感謝すべきだろう。
なぜなら病気を金で治したと感じる人はいるだろうが、健康な体質を金で買えた人はいないのである。
みんなただで与えられたものである。
この恩恵が見えないようだったら、私たちは自分の人生全体を見透かす眼も既に狂っていると思わねばならない。
その意味でなら、私も自分の体質に、大きな感謝を持たねばならないひとりである。
幼い時からひどい近視であったことは別として、やはり私の体は私の行動の自由を充分に与えてくれたのである。
具体的に考えてみても、私は二十代の前半に、盲腸炎と出産で病院のご厄介になった。
しかしそれ以後は、もうすぐ五十歳になるという時まで、とにかく入院というものをしたことがなくて済んだのである。
その時の入院も、眼の手術だったから、私の首から下は相変わらず健康そのものであった。
私は好き嫌いもあまりなかった。
外国でも、二、三ヶ月なら日本食は全くなくて済む。
土地の食べ物がどこのものでもおいしいのである。
もともと風邪を引いても食欲がなくなったことなど数えるほどしかない。
不潔なものを食べた時でも、人は当たっても私だけは何でもない、ということがよくあって、友だちに「生活程度がわかって、自慢にもならないわよ」と言われたものである。
しかし、喉だけは一年を通じて慢性の咽頭炎で治り切らないというほどの健康体でもない。
この程度の不健康さえなかったら、私は別の意味で不当に思い上がり、人の痛みもいよいよわからなくなっただろう、と思う。
喉が痛くなるだけで、私は自信を失い、体がだるくなって。どうして総理大臣などという忙しい職業に男はつきたがるのだろう、と思い始める。
体を休めることもできない境遇などというものは、私にとっては奴隷の生活なのである。
健康と病気についても、私はいつも対立した二つの思いを持っていた。

一つは、病気はしないでいようと固く決心すると、かなりしなくて済む、という少し乱暴な考え方である。
世間には時々、殆ど病気を楽しんでいるとしか思えない人がいる。
彼らは、自分の病気が大したものではない、と言われると機嫌が悪い。
彼らは、病院や医師も好きである。
病院と医師と無縁で暮らそうと決心するかどうかが、健康を保つ意欲があるかかないかの岐路のように思う。
しかしすることもなくて、暇を持て余すような生活をしていたら、朝起きると先ず、今朝はどこが悪いだろうか、と考えるのも自然であろう。
人間は、病気を探すというような行為であっても、とにかく目的というか、仕事というか、「すること」を探すものである。
私も若くはないのだから、多分体も悪いのだろうが、忙しいからそんなことは考えている閑もないだけである。
それで病気がない、という子供騙しのようなカラクリが成立する。
(了)


  • 名前: E-mail(省略可):
  • 画像:

Copyright © 1999- FC2, inc All Rights Reserved.