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新井満 作曲・歌唱・文「石川啄木 ふるさとの山に向かいて」について

1:岡田 次昭 :

2024/04/25 (Thu) 08:06:59

新井満 作曲・歌唱・文「石川啄木 ふるさとの山に向かいて」について纏めました。


       岡田 次昭



令和6年4月23日(火)、私は書架から新井満 作曲・歌唱・文「ふるさとの山に向かいて」を出してきました。

この書物は、2007年4月30日、日本放送出版協会から第一刷が発行されました。

100頁の中に有名な短歌が沢山収められて射ます。



この書物を読みますと、新井満さんは、石川啄木に心酔しています。

それに5曲も作曲しています。

素晴らしいことです。



新井満さんは、「はしめに」のところで、次のように書いています。



『夭折の詩人にして歌人、石川啄木は26年と2ヶ月の生涯で約4千首の短歌を遺しました。

その一つ、一つには映像的なドラマ性があり、まるで短編小説のようだ、と評する人もいます。

私は文章を書くかたわら、作曲もいたしますが、ある時、啄木の短歌を眺めているうちに、ふと思いつきました。

(もし啄木の短歌にメロデイーがついたなら、いったいどんな歌になるだろう……)

たぶん一首だけでは、余りに短かすぎて歌にはならないでしょう。

そこで私は、啄木が残した2册の歌集『一握の砂』と『悲しき玩具』のある頁から一首、また別のある頁から一首という具合に4首から6首を選び出し、配列して一つのかたまりを作りました。

そのかたまりにメロディーをつけたのが、本書におさめた5曲の歌です。

これによって啄木の生涯と足跡を、ほぼ辿ることができます。

本書には作曲のために選び出した啄木短歌の全て、全5曲の楽譜と歌詞を掲載し、啄木のふるさと旧渋谷村と、青春の地である盛岡市への訪問記(50枚)を書き下ろしました。

同時期に発表したCDシングルとアルバム『ふるさとの山に向ひて』(ポニーキャニオン)

と共に、本書が、懐かしい啄木の世界探訪のガイドブツクとしてお役に立てていただけるならば、これ以上のヨワ路コビはありません。 著者』



                         記



第1章 ふるさとの山に向ひて



ふるさとの山に 山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山は ありがたきかな



やはらかに 柳あをめる 北上の 岸辺目に見ゆ 泣けとごとくに



かにかくに 渋民村は 恋しかり おもひでの山 おもひでの川



ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく



第2章 一握の砂



東海の 小島の磯の 白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる



潮かをる 北の浜辺の砂山の かの浜薔薇(ハマナス)よ 今年も咲けるや



いのちなき 砂のかなしさよ さらさらと 握れば指の あひだより落つ



大といふ字を 百あまり 砂に書き 死ぬことをやめて 帰り来れり(キタレリ)



?(ホ)につたう なみだのごはず 一握の 砂を示しし 人を忘れず



第3章 啄木 さすらい



何事も 思ふことなく 日一日 汽車の響きに こころまかせぬ



みぞれ降る 石狩の野の 汽車に読みし ツルゲエネフの 物語かな



忘れ来し 煙草を思ふ ゆけどゆけど やまなほ遠き 雪の野の汽車



さいはての 駅に下り立ち 雪あかり さびしき町に あゆみ入りにき



しらしらと 氷かがやき 千鳥なく釧路の海の 冬の月かな



今夜こそ 思ふ存分 泣いてみむと 泊りし宿屋の 茶のぬるさかな



第4章 啄木慕情



石狩の 都の外の 君が家 林檎の花の 散りてやあらむ



わかれ来て 年を重ねて 年ごとに 恋しくなれる 君にしあるかな



かのときに 言ひそびれたる 大切の 言葉は今も 胸にのこれど



君に似し 姿を町に 見る時の こころ躍りを あはれと思へ



第五章 東京銀座午前二時



春の雪 銀座の裏の 三階の 煉瓦造りに やはらかに降る



夜(ヨ)の二時の 窓の硝子を うす紅く(アカク) 染めて音泣き 火事の色かな



もしあらば 煙草恵めと 寄りて来る あとなし人と 深夜に語る



赤赤と 入り日うつれる 河ばたの 酒場の窓の 

白き顔かな



曠野(アラノ)より 帰るごとくに 帰り来ぬ 東京の夜(ヨ)を ひとりあゆみて


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