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藤井康男著「右脳天才モーツアルト なぜ、日本人に心地よいか」について

1:岡田 次昭 :

2024/04/19 (Fri) 08:56:12

令和6年4月17日(水)、私は書架から藤井康男著「右脳天才モーツアルト なぜ、日本人に心地よいか」を出してきました。
この書物は、1991年4月12日、同文書院から第一刷が発行されました。241頁の中に、モーツアルトの曲が沢山紹介されています。
今回は、その内、末尾の「モーツアルトのメニュー」について纏めました。

藤井康男さんは、昭和5(1930)年8月14日、東京都千代田区東神田にて生まれました。
彼は、昭和29年に千葉大学薬学部を卒業し、大阪大学大学院理学研究科生物化学専攻を終了しています。
昭和30年に龍角散に入社しました。昭和32年に子会社のヤトロンと血清トランスアミナーゼ測定試薬(GOT・GPT)を自ら開発しました。昭和38年、三十代の若さで、龍角散の7代目社長に就任しました。昭和42年~52年まで北里大学助教授を務めました。
彼は、クラシック音楽にも精通し、自らピアノ、フルートを演奏しました。龍角散室内管弦楽団の定期演奏会ではソリストを務めました。文筆家としても知られ、著書に「病気と仲よくする法」「創造型人間は音楽脳で考える」「右脳人間」「文科的理科の時代」「仕事と遊びは掛け算でいけ」「カラヤンの帝王学」「ビジネスマンの父より愛をこめて」などがあります。
平成8(1996)年11月10日、彼は亡くなりました。
死因は不詳です。享年67歳でした。

主な著書は、次の通りです。

『右脳型情報人間が「歴史」を変える』ダイヤモンド社 1990年
『多能人間のすすめ 90年代型自己実現の知恵』史輝出版 1990年
『カラヤンの帝王学 頂点を極めた男の愛と野望』経済界 1991年
『雑学社長のおもしろ読本 役に立たない話』同文書院(快楽脳叢書) 1991年
『ビジネスマンの父より愛をこめて 竜角散社長藤井康男が贈る12章』光人社 1991年
『右脳天才モーツァルト なぜ、日本人に心地よいか』同文書院(快楽脳叢書)1991年
『意表をつく話 びっくり、どっきり、キテレツ談議』サンマーク出版 1992年
『イメージ優先の社長学』情報センター出版局 1992年
『藤井康男の平成おやじ講座』講談社 1992年
『本物志向のすすめ 個性化経営の社風と社格』日本規格協会 1992年
『できる人間はよく遊ぶ いい仕事を生み出す"ムダ"の効用』大和出版 1993年
『21世紀の曖昧論』佼成出版社 1996年

私は、モーツアルトのクラリネットに関するCDを4枚持っています。
末尾に明細を記載しておきます。
悲哀に満ちた『クラリネット協奏曲 イ長調 K622』は、モーツアルト晩年の名曲です。優劣を付けがたいところ、藤井康男さん同様、モーツアルトの626曲中、私はこの曲が一番好きです。
次に、好きな曲は、『アイネ・クライネ・ナハトムジーク(Eine kleine Nachtmusik) k525』です。 (Eine kleine Nachtmusik)を直訳しますと、一つの小さな夜の音楽となります。
この曲が日本に入ってきたときに、これを「小夜曲」と訳した人は、正に天才です。
今では、この曲はドイツ語の『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』で親しまれています。



「モーツアルトのメニュー」 (全文)

全作品の中から一曲だけ選ぶとしたら何を持ってくるか。これは大変むずかしいが、敢えて決めれば、『クラリネット協奏曲 イ長調 K622』ということになろう。
死の年の10月のクラリネット奏者・シュタードラーのために作曲したものである。このあとモーツアルトはフリーメイスン小カンタータ『われらが喜びを高らかに告げよ K626』と有名な未完の大作『レクイエム K626』しか残していないから、器楽曲、協奏曲の最後の作品ということになる。この曲は疑いもなくこの世にクラリネットのための最高の作品である。『クラリネット五重奏曲 イ長調 K581』も永遠の名曲で、こちらの方を推す人も少なくない。
しかし作品番号が示すようにクラリネット協奏曲は実質的にモーツアルトの遺作と言える。
そして形式内容ともに頂点に達した最高傑作である。
そして、もう一つの理由は、クラリネットはモーツアルトの時代に楽器として完成されモーツアルトの作品の中で重要なところに登場する。
前述の二曲のほか『管楽器のためのシンフォニア・コンチェルタンテ K297b』、
偽作という説もあるが、名曲である。
九柱戯をやりながら作曲したという『ケーゲルシュタット・トリオ 変ホ長調 K498』、
『39番シンフォニー 変ホ長調 K543』の「メヌエット」、その他オペラの中で美しい調べを随所でうたい上げる。
当然、彼の初期中期の作品にはクラリネットはまだ登場しない。
クラリネットは晩年の頃に改良され今日のような音色になった。
モーツアルトは特にA調のクラリネットを偏愛といえるほどに好んだ。
シュタードラーという名手との出会いによってこの傾向は更に強まった。
クラリネットというと昔はチンドン屋を連想したが、この楽器は名手が奏でると天来の妙音を出す。
一説によるとクラリネットは楽器の中で一番人の声に近い音を出すという。
ウィーンフィルでは木管楽器にはできるだけクラリネットに近い音色が要求されるという。
次にベスト・スリーのメニュー選んでみよう。
まず、『アイネ・クライネ・ナハトムジーク K525』。モーツアルトは一生の間に実用音楽つまり貴族の館で食事や舞踏会のために多くの短い娯楽的な音楽を残した。
それはほとんど注文によるものだが、とてもいやいや書いたとは思えない美しい曲がたくさんある。
中でも『ドイツ舞曲 k605』、『ハフナーセレナード ニ長調 K250』、『ポストホルン・セレナード ニ長調 K320』は有名である。「アイネ・クライネ」と愛称されるこの弦楽セレナードは晩年の作曲で、父レオポルトの死後、誰の注文でもないのに書かれている。
余りにも有名でモーツアルトといえばすぐこの曲が出てくる。
いささかうんざりだが、その大衆性にもかかわらず、改めて聴くとモーツアルトの神髄ともいうべきあの天上の音楽の調べがいたるところに出てくる。
私は中学生の時、ウィーンフィル、ブルーノ・ワルターによるSPの名盤でこの曲を聴き、全身がしびれる感動に酔ったことがある。
これだけ有名な曲に何のエピソードもないし、晩年に突然この種の実用音楽がでてくるのも不思議である。
もしかすると、この曲はモーツアルトに最大の影響を与えた偉大な父親の想い出に捧げたのかもしれない。曲想も何となくレオポルド的と言えなくもない。
これは古今の名曲中の名曲であろう。
第二番目は歌劇『フィガロノ結婚 K492』より第一幕、アリア「もえ飛ぶまいぞ」。
突然歌曲が飛び出した。モーツアルトの歌劇はどれをとっても素晴らしい。特に『魔笛 K620』『ドン・ジョバンニ K527』『コシファントッテ』『フィガロ』は美しい歌と音楽の宝石戦箱である。その中からあえて一つを選ぶのは無茶であるが、オペラ全曲は選べないので心を鬼にして一つを選んだ。このアリアは正にモーツアルトそのものである。モーツアルトもこのメロディを別の小品に仕上げている。歌曲、アリアとしても名曲だが、人の声を巧みに楽器として用い、大成功している典型なのである。
第三番目は、『ピアノ・ソナタ 変ロ長調 K570』である。
若い頃、SPレコードを聴き漁っていた頃、ワルター・ギーゼキングの吹き込んだこの曲に出合った。どういうわけかその頃レコードでは、モーツアルトの独奏曲はほとんど聴けなかった。ギーゼキングのハ短調の『幻想曲とソナタ』、フィッシャーのイ長調『トルコ行進曲ソナタ』くらいであった。モーツアルトのピアノ・ソナタは子供のレッスン用によく使われるが、プロの演奏家がリサイタルでとり上げることが少なかった。
音を出すのは簡単だが、音楽的にちゃんと弾くことは逆に大変難しい。ギーゼキングはのちにLPで62曲全ての全集を出すが(世界最初)、これこそ不滅の録音であろう。それ以後リリークラウス、ヘブラー、バレンボイム、ブレンデル、バックハウスなどが盛んにモーツアルトのソナタを弾くようになった。モーツアルトのピアノ・ソナタを世に出したのはギーゼキングではないかと考えている。そのギーゼキングがどういうわけか当時余り有名でなかったこの曲を最初に選んだのである。『ピアノ・ソナタ 変ロ長調 K570』はたまたまバイオリンのパートも書かれており、バイオリン・ソナタとしても演奏される。
しかも第三楽章は未完で他人の手が入っているという研究もある。
モーツアルト弾きといわれたギーゼキングは18曲の中からこの曲を第一番に吹き込んだのだろう。理由は今となっては分からない。しかし、最近ではこの曲はよく取り上げられる。弾いてみると非常にピアニスティックなのである。レガート、スターカット、フォルテ、ピアニシモを自在に駆使すると正に現代のピアノの響きをすべて引き出してくれる。私も好んでというより一番この曲をよく弾く。何か日本的なわび、さびのようなものさえ感じられる時がある。モーツアルトのピアノ協奏曲ではこの曲と『ピアノ・ファンタジー ニ短調 K397』をためらうことなく日本人の好きなもとしてあげることにする。
さて、次にこれらベスト・スリーに続く、ベスト・ファイブを選んでみよう。

① 『フルート協奏曲第二番 ニ長調 K314』
② 『弦楽五重奏曲 ハ長調 K515』
③  モテット『踊れ・ヨロコベ・汝幸いなる魂よ K165』
④ 『二台のピアノ・ソナタ K448』
⑤ 『シンフォニー 第39番 変ホ長調 K543』

これらについては細かく触れない。3曲のソプラノのための美しい曲は、はじめから終わりまで祈りの言葉アレルヤだけを唱える小品で、映画『オーケストラの少女』の中でデアナ・ダービンが歌い空前のヒットをした曲である。
更にベスト・テンといきたいとろだが、実はモーツアルトという作曲家はこういうことが大変やりにくいところに特色がある。
どれをとっても美しい。
ここではできるだけ俗ウケしていないものの中からえらんだつもりだが、それでも何曲かポピュラーなものが入ってしまう。ポピュラリティーと芸術性が全くいっしょになってしまったのが名作「魔笛」て、それは、実はモーツアルトの本質でもあるのだ。

(ご参考)

「私の所有しているクラリネットに関するCD」

1. モーツアルトのクラリネット五重奏曲 イ長調 K581
ブラームスのクラリネット五重奏曲 ロ短調 作品115
クラリネット アルフレート・プリンツ
楽団     ウィーン室内合奏団

2. クラリネット五重奏曲 イ長調 K581
クラリネット協奏曲  イ長調 K622

クラリネット ホセ・オストランク
  指揮     アルベルト・リッツィオ
  楽団 モーツアルト・フェスティヴァル管弦楽団

3. クラリネット協奏曲  イ長調 K622
クラリネット五重奏曲 イ長調 K581

クラリネット エルンスト・オッテンザマー(Ernst Ottensamer)
  楽団     Wiener Virtuosen

4. フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 k299
クラリネット五重奏曲 イ長調 K581

 フルート   スーザン・パルマ
ハープ    ナンシー・アレン
楽団     オルフェウス室内管弦楽団


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